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自転車かいぼー学

「ホイールのはなし」

第1章: 歴史と構造力学
バイクでもっとも重要なパーツはホイールだ!
 今回、解剖するパーツはホイール(車輪)。言うまでもなく、自転車を構成する部品のうち、もっとも重要な部品のひとつだ。仮に変速機が壊れても走れないことはないが、ホイールが壊れてしまったらもう走るのは無理なのだ。ホイールはリム,ハブ,スポーク,タイヤの4つで構成されている。最近ではリムハブスポークを一体化してしまったコンポジットホイールなどもあるが、ここでは最も一般的なスポークによる「テンションホイール」を解剖してみようと思う。テンションホイールの語源は、ハブとリムをつなぐスポークをニップルと呼ばれる小ネジで強く張っているからである。横から見ると丁度「横浜ベイブリッジ」の様な構造なのだー!

ホイールの歴史に迫る!
起源は「馬引き戦車?!」
 そもそも車輪の起源は、丸太を使って重いものを動かす「コロ」の考え方から発達したものと考えられている。コロが車輪らしくなったのは、今から5000年ほど前にさかのぼる。最初は太い木を輪切りにしただけのモノだったと考えられている。それがやがて幾つかの木片を組み合わせて車輪を作るようになった(生産性の向上?)。そして板状車輪は3700年ほど前、ついにスポーク型の車輪に進化するのだ。もっともスポークといってもスポークは「木」、ようするに木工組み合わせ車輪なのだ。スポークの数も4〜8本程度だった。この形状の車輪は馬に引かせる戦車(馬車)に使われたことがわかっている。戦車を速く走らせるには、車輪の軽量化が不可欠だったのだ。さらに速く走ると言うことはそれだけ衝撃も増えたわけで今度は強度も要求されたのだ。「軽くて強い」という相反する要素を満足させるために工夫を重ね、外周には丈夫な金属を巻き付けたり、スポーク部分にはより軽い木材を使用したり確実に進歩を重ねたのだ。現在の車輪の原点は、古代の馬引き戦車の車輪だったのだ!
鉄製スポークの登場
 自転車が世に出たころ、車輪はまだ「木工組み合わせ車輪」だった。しかし人力がエンジンの自転車にとってはこれでもまだ重く、さらなる改良がされた。そこで登場したのが「鉄線を張った」ホイールの登場である。これが登場したのは1800年ごろで当時「だるま自転車」と呼んでいる前輪の直径が2メートルもあるようなあのタイプにその原型を見ることが出来る。おそらくこんなに大きな車輪は木製では難しかったのだろうと考えられる。そしていくつか改良され現在一般化している「スポークテンションホイール」へと進化していく。(注釈:この段階ではリムはまだ木のままである)
タイヤの進歩がリムを進化させた
 スポークの素材は木から鉄へと進化したが、その他のパーツはどうだったのだろう?次にタイヤからかいぼーしてみよう。タイヤの素材は木から鉄の輪,ゴムの塊の輪と変遷しつづけ、1888年にスコットランド人のダンロップが空気入りタイヤ(ニューマチックタイヤ)の開発に成功した。当初の空気入りタイヤはタイヤを布地でリムにぐるぐる巻きにして止めていたものでマミー(ミイラ)タイヤと呼ばれていた。乗り心地は飛躍的に進歩したものの、空気入りタイヤの宿命である「パンク」が起きてしまうといちいち止め布をほどかなくてはならず大変だったのだ。というわけでリムからタイヤを外したり入れ替えたりするような脱着機構が取り入れられ、整備性も耐久性も飛躍的に進歩した。そしてここに金属製のリムが登場する主因があったと推測される。というのも今では当たり前になった引っ掛け式タイヤを支える特殊な断面のリムが木では強度的に不可能だったのだ。つまりこの時期タイヤとリムの改良は同時に行われていたと推測される。

ホイールの歴史をざっと振り返ってみたが、強さと軽さを追い求める歴史であったとおわかりいただけたかな?

テンションホイールはなぜ強い? その秘密に迫る!
 当初のスポークの張り方はハブとリムを直線的に結ぶ「ラジアル組み」であった。木製車輪の時代はもちろんのこと、初期のダルマ自転車のホイールもラジアル組だった。だがこの組み方には「衝撃に弱い」という弱点があった。ラジアル組みのホイールが路面から衝撃を受けると、その部分のスポークのテンションが緩んでしまいその周辺のリム部がダメージを引き受けてしまう。つまりホイール全体として見た場合一部分に極端に衝撃が集中してしまうのだ。そしてこの弱点を補う組み方が現在一般的に見られる「交叉組み」すなわちタンジェント組みの登場だ。この組み方のホイールが先ほどの例と同様に路面から衝撃を受け一部分のスポークが緩む、ここまでは同じ現象だが、次にほかのスポークのテンションがハブを中心にねじれモーメントが発生させ、ホイール全体のテンションを保とうとする力となるのだ。これがタンジェント組みホイールの強さのヒミツだったのだ。何もでたらめにスポークが交叉しているわけではないのだ!

Copyright : Junichi Morita とプロジェクトK(イラスト:五十嵐 晃)


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